巻頭言
新医師臨床研修制度の光と陰
森本 紳一郎
1
1藤田保健衛生大学医学部循環器内科
pp.947
発行日 2007年9月15日
Published Date 2007/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100884
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新医師臨床研修制度の功罪について述べたい.1968年に実施修練制度(インターン制度)の廃止,臨床研修制度の創設(努力義務)があった.そして,その36年後の2004年に新医師臨床研修制度が発足した.旧制度の問題点として,「研修プログラムが不明確であること」,「施設間格差が著しいこと」,「研修成果の評価が不十分であること」,「指導体制が不十分であること」などがあげられた.
これらの問題点を改善すべく発足した新制度における基本3原則は,1)医師としての人格の涵養,2)プライマリー・ケアへの理解を深め,患者を全人的に診ることができる基本的な診療能力を修得,3)アルバイトをしないで研修に専念できる環境を整備することである.しかし,この臨床研修制度には大きな光と陰の部分がある.最も大きな負の影響は,医師の偏在化であろう.これには地域と診療科の二つがある.従来は地方の大学の卒業生も一定の割合で母校の医局に入局していたが,この制度になってからは研修医は都市部の病院に集中し,地方の大学病院に残ろうとする者は激減した.医局への入局者が減ったために,その地域の基幹病院にさえ医局から医師を派遣できず,診療科の閉鎖に追い込まれる病院が増えている.地方の医科大学は地域医療に様々な貢献をしてきた.大学の医局講座制の弊害のみが強調され,これまで果たしてきた医局講座制の役割についての認識が,あまりにも乏しかったと言わざるを得ない.
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