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概要
医学部を卒業し医師国家試験に合格した後の臨床研修は,医師法に基づき昭和43年から制度化されていた1).しかしながら,国民から期待される医師像の変化等に伴い,従来の制度には様々な課題が示されていた.そのため,平成12年の医師法の一部改正により抜本的な見直しが行われ,36年ぶりに平成16年度から,新しい医師臨床研修制度が実施されることとなったものである.以下にその概要をまとめる.
1. 臨床研修の義務化
従来の制度においては,2年以上の臨床研修を行うことは努力規定であったが,新制度において義務化された.研修を修了した旨は医籍に登録され,病院等の管理者となれるのは平成16年度以降の医籍登録者にあっては,臨床研修修了医師に限られる.
2. プライマリ・ケアを中心とした幅広い診療能力の獲得
新制度は,将来専門とする分野にかかわらず,一般的な診療において頻繁にかかわる負傷または疾病に適切に対応できる医師を養成することを目的の1つとしている2).このため,2年間の研修期間に,内科,外科,救急部門(麻酔科を含む),小児科,産婦人科,精神科および地域保健・医療の7つの科目をすべて研修することとした.
3. 臨床研修の専念義務
新制度では,臨床研修を受けている医師は臨床研修に専念し,その資質の向上を図るように努めなければならない.従来は,臨床研修期間中の研修医に対する処遇は不十分な場合があり,研修医は,研修病院以外の医療施設でアルバイト業務を行うことが多かった.これは,研修効果という観点から望ましくないばかりではなく,研修医が上級医師の十分な監督を離れて医療を行うことは医療の質と安全の上からも問題が指摘されていた.
新制度においては,臨床研修補助金等により必要な対応がなされたのに伴い,研修医が適切な監督・指導に基づかないアルバイト業務をせずに,臨床研修に専念することとなった.
4. 到達目標の設定
新制度においては,医療人として必要な基本的姿勢・態度や,経験すべき検査・手技,および疾患・病態について目標が定められ,各臨床研修プログラムはこの目標を達成できる内容であることが求められている.例えば経験が求められる疾患・病態として,貧血,骨折,心不全,妊娠分娩等,日常の診療現場で頻繁に遭遇する88項目が挙げられ,このうち70%以上を経験することが望ましいとされている.
5. 指導医の養成
臨床研修の効果的な実施にあたっては,単に個々の専門分野において知識と経験を有するのみならず,指導・教育技法についても一定の修練を受けた指導医の役割が重要である.こうした観点から,厚生労働省は指導医講習会の開催指針を定め,講習会の実施主体となる学会や病院団体等の関係団体に周知した.この指針に基づいた原則2泊3日の講習会を修了した指導医は,平成16年度末段階で約8,000名に達している.
6. 臨床研修病院の指定基準の緩和
基本的診療能力の獲得という観点から,臨床研修病院指定基準を見直した.病床数や剖検に係る規定(従来は300床以上,剖検率30%以上)を廃止する等の措置により,旧制度にあっては大学病院以外の臨床研修病院は600余りにとどまっていたところが,新制度においては2,000以上に増加した.これにより,地域に根ざした中小規模の医療機関での臨床研修の機会が増えることになる.
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