Japanese
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綜説
ARDSの換気戦略―圧と量による肺損傷防止
The Strategy of Mechanical Ventilation for Acute Respiratory Distress Syndrome to Prevent Lungs from Barotraumas or Volutraumas
財津 昭憲
1
Akinori Zaitsu
1
1九州大学医学部附属病院救急・集中治療部
1Intensive Care Unit, Kyushu University Hospital
pp.1223-1228
発行日 2003年12月1日
Published Date 2003/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100762
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圧負荷肺損傷(barotrauma)と 容量負荷肺損傷(volutrauma)の違い
機械的人工呼吸管理の合併症として,気囊形成(図1,2),縦隔気腫,心囊気腫,皮下気腫,気胸,気腹(図2)などが知られている.これらは高い気道内圧の負荷が肺損傷の原因と考えられて圧負荷肺損傷(barotrauma)と呼ばれていた.しかし,Dreyfussら1)の実験により,同一の高い気道内圧負荷でも胸郭の運動を制限して肺の過膨張を抑制すればI型肺胞上皮の断裂がみられなかった.肺損傷は圧力そのものによるものではなく,圧負荷による肺胞組織の過伸展が肺損傷の原因であることが証明され,容量負荷肺損傷(volutrauma)がより正しい表現といえる.(以降は容量負荷肺損傷に統一して述べる.)
発生頻度と原因
容量負荷肺損傷の発生頻度は人工換気中の患者で0.5~40%と報告されている2).高い気道内圧によって肺胞が過度に拡張され,肺胞上皮が破裂し,肺胞ガスが隣接する血管周囲の間質組織内へ押し込まれる1,2).リークしたガスは血管の走行に沿って,縦隔側あるいは胸膜側に流れて,弱い組織から漏れて,1)縦隔気腫(pneumo-mediastinum),2)肋膜下気囊(subpleural air cystes),3)皮下気腫(subcutaneous emphysema),4)気胸(pneumo-thorax),5)気腹(pneumo-peritoneum),6)心囊気腫(pneumo-pericardiumu)として診断される(図1)2).
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