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はじめに
急性肺損傷(ALI/ARDS)に対する加療では,呼吸,循環,輸液を含む全身管理の重要性がすでに指摘され,これらの改良により,初期には95%に達するといわれた致命率が徐々にではあるが改善されつつある.しかしながら,未だ急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome, ARDS)の致命率は約50%と不良である1~3).シベレスタット(エラスポールTM)など新規薬剤が最近導入されているが,急性肺損傷(acute lung injury, ALI)に対する薬物療法としては,これという決め手に欠けているのが現状である.
コルチコステロイドは,急性肺損傷(ALI/ARDS)に使用されて数十年が経過した現在でも未だ議論が分かれる古くて新しい薬物療法である.本邦においては,多くの施設でメチルプレドニゾロン(mPSL)1gを3日間投与するいわゆるパルス療法がなされ,一部の症例では奏効すると報告されている2).実際に,当院を含めた福岡市医療圏のcritical care medicineを実践する施設でも,大多数が急性肺損傷(ALI/ARDS)に対してコルチコステロイドを使用している.コルチコステロイドの使用を支持する専門家は,コルチコステロイドにより肺の過剰炎症反応が抑制され,急性肺損傷(ALI/ARDS)の予後を改善すると主張している3).また,重症敗血症は高率に急性肺損傷を来すが,感染症それ自体に対しても,日本呼吸器学会「成人院内肺炎診療の基本的考え方」のガイドラインが示すように,抗菌薬の補助的療法として副腎皮質ホルモンの併用が記載されている4).しかしながら,多くの論文が指摘しているように,急性肺損傷(ALI/ARDS)に対するコルチコステロイドの効果は,致命率に対しては懐疑的である1,2).
本稿では,急性肺損傷(ALI/ARDS)だけではなく,高率に急性肺損傷(ALI/ARDS)を合併する敗血症に対してのコルチコステロイドの効果〔主に急性肺損傷(ALI/ARDS)に対する効果〕についても言及し現在の文献と考え方を紹介する.
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