Japanese
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特集 スタチンのプレイオトロピック効果と心血管疾患
動脈硬化とスタチン
Atherosclerosis and Statin
北本 史朗
1
,
江頭 健輔
1
Shiro Kitamoto
1
,
Kensuke Egashira
1
1九州大学大学院医学研究院循環器内科
1Research Institute of Cardiovascular Medicine, Graduate School of Medical Sciences, Kyushu University
pp.771-779
発行日 2003年8月1日
Published Date 2003/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100697
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はじめに
動脈硬化は,冠動脈心疾患(狭心症,心筋梗塞),脳梗塞,閉塞性動脈硬化症など様々な疾患の基礎となる重要な病態である.動脈硬化は,様々な因子・過程が複雑に相互作用することにより生じるものであるが,血漿コレステロールレベルの増加と動脈硬化性疾患との間には明らかな関連性が認められている1~3).実際,LDLコレステロールを低下させることが冠動脈心疾患の一次・二次予防に重要であることはよく知られており,臨床的には世界中でコレステロール低下療法が行われている1~4).HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)は最も広く使用されているコレステロール低下薬であり,大規模臨床試験においてその有益性が実証されているが,こうした試験のサブグループ解析からスタチンによる臨床上の有益性の全てがコレステロール低下によるもののみでは説明できないことが示唆されている.現在,こうしたスタチンのコレステロール非依存性の多彩な作用(プレイオトロピック効果)が注目されはじめてきており,その一部は内皮細胞機能の改善,炎症抑制など動脈硬化のいくつかの形成過程に影響を与えることにより生じることが示唆されている5).
本稿では,動脈硬化の発生機序について述べた後,スタチンのプレイオトロピック効果に関する大規模臨床試験における成績およびその分子生物学的メカニズムについて記述する.
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