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はじめに
肺線維症の発生機序に関しては,他稿で述べられているように,様々な要因による肺胞上皮細胞のアポトーシスに始まると考えられている.その要因が一時的なものであるか,あるいは早い段階でその要因を除去することができるのであれば,肺胞壁は速やかに修復されるのであろう.しかし,肺胞上皮細胞への傷害が持続すると,不可逆的な病的変化として残存するような肺胞壁のリモデリングが生じ,呼吸機能障害の症状を呈するようになる.特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis,IPF)は特定されない要因による上皮傷害が持続することによって,慢性的に肺胞壁のリモデリングが進む疾患である.急性肺傷害のような,肺内の肺胞上皮細胞が一時期に急激な変性を来すのとは異なり,正常肺胞構造を部分的に保持しつつ,穏やかながらも線維化が進行していく.逆にいえば,呼吸床を保っているからこそ慢性に推移することが可能となる.
特発性肺線維症の特徴的な所見として,高分解能CT(high resolution computed tomography, HRCT)にて示される,両側下肺背側優位に分布する蜂巣肺病変がある(図1).その有無は診断上最も重要な所見であるが,一方,病理学的に特徴的なパターンは,時相の不均一を示す通常型間質性肺炎(usual interstitial pneumonia,以下UIP)である1).特に線維芽細胞巣(図2)は,疾患特異性はないものの,線維化の活性度を示し,患者の予後との相関も示されたことから病理診断上重要視されている1).この蜂巣肺と肺の線維化の機序ははたして一元的なものであろうか.特発性肺線維症の効果的な治療を考えるうえで,この二つの病変構築機序の解明は重要である.
ここでははじめに,ヒト肺における特発性肺線維症の病変構築の特徴を考察し,その病態の特徴を利用した実際的な臨床治療への可能性を,われわれの最近の疾患モデルを用いた実験結果に基づいて考察する.
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