Japanese
English
綜説
循環器疾患の治療のためのナノDDS
Nanotechnology-based Drug Delivery Systems for Treatment of Cardiovascular Diseases
西山 伸宏
1
,
鄭 雄一
1
,
片岡 一則
1,2
Nobuhiro Nishiyama
1
,
Ung-il Chung
1
,
Kazunori Kataoka
1,2
1東京大学大学院医学系研究科附属疾患生命工学センター・臨床医工学部門
2東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻
1Devison of Clinical Biotechnology, Center for Disease Biology and Integrative Medicine, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo
2Department of Materials Engineering, Graduate School of Engineering, The University of Tokyo
pp.317-324
発行日 2007年3月15日
Published Date 2007/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100522
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はじめに
ナノテクノロジーの医療応用の一つとして,ドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System;DDS)が大きな注目を集めている.薬剤を「必要な時に,必要な場所で,必要な量だけ作用させる」ことを目的とするDDSは,薬剤の理想的な投与形態として,悪性腫瘍,循環器疾患をはじめとする様々な疾患の治療への応用が期待されている.実際に,癌化学療法剤を送達するいくつかのDDS製剤が既に実用化されており,その数は今後ますます増加するものと予想される.一方,近年の分子生物学の進歩により,疾患の分子メカニズムに基づいた分子治療を可能とする核酸医薬に対する期待が高まっている.しかしながら,その実用化のためには,核酸医薬を安定に標的細胞まで送達し,細胞内に効率的に導入できるDDSの開発が必要不可欠であると考えられる.さらに,近年,疾患を早期に検出する診断デバイスが注目され,世界中で活発な研究が行われている.
本稿では,このようなナノテクノロジーを利用したDDSに関して,循環器分野に焦点を当てて,いくつかのアプローチを紹介する.一般的に,ナノテクノロジーとは,その構成要素が少なくとも一つの次元において1~100nmの大きさであるものと定義されるが,ここではそのような厳密な定義にとらわれず,循環器疾患の治療において有用であると思われるDDS技術を取り上げたい.
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