Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias;IIPs)は分類上の変遷を経て,現時点では特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis;IPF)をはじめとする7つの亜分類(表1)1,2)から成り立っている.IIPsは従来外科的肺生検をしなければ診断できないとされてきたが,IPFなど一部のIIPsにおいては症例の集積と高分解能コンピューター断層撮影(high resolution computed tomography;HRCT)の発達により必ずしも外科的肺生検をしなくても診断が可能となってきた.特にIPFの臨床診断におけるHRCT所見の果たす役割は大きい.外科的肺生検を必要とする最も大きな根拠は,生検をすることによって予後が推定できること,あるいは副腎皮質ステロイドなどの治療効果が期待できるかどうかを判定することができることにある.また,現時点の分類は決して確定したものではなく流動的であり,これからますます症例を集積して確固とした分類にしなければならないという学問的要求もある.
Liebowが間質性肺炎の分類を提唱した3~5)当時は主として剖検による診断であったが,外科的肺生検が盛んになり病理学的にusual interstitial pneumonia(UIP)と一括りにされていた原因不明の間質性肺炎から次々と新たな概念が世に出た.細分化されればされるほど厳密な病理組織学的診断基準が必要となり,外科的肺生検の重要性がますます認識されてきた.しかし,外科的肺生検でも診断に適さない部位から採取されることがままあること,1カ所のみの生検では必ずしも真の病像に迫れないこと,複数箇所生検することによって異なった病理組織像(UIPとfibrotic nonspecific interstitial pneumonia;fNSIPなど複数の病理組織学的パターン)が得られることがあること,などが新たな問題点として浮上した.症例が集積し細分化されることによって生ずる境界領域の取り扱いの難しさが明らかとなってきたのである.
わが国においても胸腔鏡下肺生検(VATS)が広く一般化してきたとはいえ全身麻酔を必要とする外科的肺生検に代わる臨床診断の確立を待ち望んでいる臨床医は少なくないはずである.IPFについては臨床診断基準がほぼ確立し,一部の急性間質性肺炎(acute interstitial pneumonia;AIP)や特発性器質化肺炎(cryptogenic organizing pneumonia;COP)についても外科的肺生検をしなくても診断できるようになった1,2).
本稿ではそれぞれのIIPについて現時点における外科的肺生検や経気管支肺生検の診断に占める位置づけを踏まえIPFとNSIPを中心に臨床診断基準について述べる.臨床診断基準はIPF以外には確立されていないが,もし作るとすればどのような基準がふさわしいのかということにも触れてみたい.
HRCTはかなりの確率の高さでIPFを診断することができるが,IPF以外のIIPsの診断には限界がある.とすればIPF以外のIIPsの臨床診断に貢献できるHRCT以外のツールも探さなくてはならないが,その有力な候補はといえばいつも当てにならないといわれつつもTBLBであると筆者は考えている.当然TBLB単独では診断できないが,HRCTや他の臨床情報と協力することによってTBLBが臨床診断基準の中に積極的な役割を占めることができないかということについても論じてみたい.
IIPsの治療オプションは限られている.IIPsはそれぞれの亜分類の境界が限りなく不透明である.たとえ最終的に組織学的な診断が異なったとしても治療方針に大きな変化がないとすれば,予後に力点を置いたもう少し緩やかな臨床診断基準,言い換えれば,治療を開始するに当たっての“お上のお墨付き”があってもよいのではないだろうか.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.