Japanese
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Current Opinion
ARDSの成因をめぐって
Pathogenesis of ARDS
栂 博久
1
Hirohisa Toga
1
1金沢医科大学呼吸器内科学
1Department of Respiratory Medicine, Kanazawa Medical University
pp.1007-1011
発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100461
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ARDSの成因をめぐる最近1年間の話題
1 はじめに
急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome;ARDS)は全身の種々の疾患に引き続いて起こる急性呼吸不全であり,呼吸・循環管理,全身管理の発達により予後は改善しつつあるが,それでも死亡率は30~70%と高率である.最近のアメリカでの比較的大規模のコホート研究1)によれば,15歳以上のARDSの罹患率は78.9/10万人年であり,全死亡率は38.5%であった.加齢とともにARDSの罹患は増加し原疾患は敗血症が最も多かった.ただし,ARDSの疫学的指標は国(人種など)間で相当の違いがあることが予測されている.
ARDSの臨床経過や肺組織所見(びまん性肺胞傷害)は原疾患によらず共通している.ARDSに先行する原疾患は比較的明らかになっているが,原疾患からどのような病態でARDSに至るかは明らかではない.活性化した好中球が肺毛細管から肺間質,肺胞腔内へ浸潤し,種々の組織傷害物質を放出し,肺胞上皮をはじめとする肺組織を破壊していく2)という病態は共通しており,コンセンサスが得られていると思われる.しかし,これに至る過程は明らかでないし,これが最終段階であるという証拠はない.この1年をみてもARDSの成因に関する研究は極めて多岐にわたっており,大まかな方向性を整理することも困難であるが,いくつかの視点からまとめてみることとする.
なお,急性肺損傷(acute lung injury;ALI)は病態的にはARDSと同じで,その軽症型であるが,煩雑さを避けるため今回はすべてARDSと表現した.
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