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はじめに
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は喘息と同様に慢性の気道炎症を来す疾患である.しかし,喘息の主体が好酸球性炎症であるのに対し,COPDでは好中球性炎症が主病態であり,その病態は全く異なっている.そのため喘息では治療の中心が吸入ステロイド薬となるのに対して,現在COPDにおける好中球性炎症を制御しうる有効な薬剤は存在せず,治療の中心は気管支拡張薬であることがCOPDの国際ガイドラインであるGlobal Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)において明記されている1).すなわち,現時点ではCOPDの治療目標は閉塞性換気障害を改善し,息切れなどの自覚症状を軽減することで,quality of life(QOL)を改善することである.
安定期COPD管理に用いられる気管支拡張薬としては,抗コリン薬,β2アドレナリン受容体刺激薬,およびメチルキサンチン製剤がある.このうち抗コリン薬はCOPDで唯一の可逆性部分であるアセチルコリンによる気道狭窄を抑制することで効果を発揮し,安定期COPDの治療の中心となっている2,3).しかし,COPDのⅡ期以上では長時間作用型の気管支拡張薬の定期使用が推奨されているものの,従来の抗コリン薬はいずれも短時間作用型であり,その持続性やコンプライアンスの低下などの課題があった.一方,2004年秋より長時間作用型の抗コリン薬であるチオトロピウムが臨床使用可能となる予定で,本邦でのCOPDに対する臨床効果に期待が寄せられている.
本稿ではこのチオトロピウムの作用機序,有効性,安全性を最近のエビデンスを交えながら概説する.
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