Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
呼吸器疾患のターミナルケアをめぐる最近1年間の話題
人口動態の統計によれば1),2003年の全死亡1,015,034人の死因は,①悪性新生物30.5%,②心疾患15.7%,③脳血管疾患13.0%,④肺炎9.3%,⑤不慮の事故3.8%,⑥自殺3.2%,⑦老衰2.3%,⑩慢性閉塞性肺疾患(COPD)の順となる.全体死因と同じなのは,男性551,809人は6位まで,女性463,225人は4位までで,COPDは男性で8位,女性で16位であった.呼吸器疾患の死因として重要なのは肺炎,肺癌,COPDである.悪性新生物は40歳から89歳までの死因の1位で,なかでも肺癌は悪性新生物中死因のトップで,2002年に56,405人,2003年に56,701人と増加しており,特に男性における増加が急激である(41,615人,人口10万対67.5).女性においても1位の大腸癌と同様な速度で増加中である.一方,COPDは世界で死因の4位とされ,本邦では2002,2003年とも死因の10位であるが,2003年には死亡数13,617人(10万対10.8)と増加した.男女比は3対1であるが,女性の喫煙者の増加から将来この差はもっと小さくなると思われる.GOLD2)を踏まえて,日本呼吸器学会でもCOPDのガイドラインが改定された3).在宅酸素療法患者の基礎疾患としてCOPDは最も多く約4割を占める.そこで今回は,肺癌およびCOPDを中心とした慢性呼吸器疾患のターミナルケアについて述べることにする.
1 肺癌のターミナルケア
手術可能な肺癌は約2割とされており,集学的な試みにもかかわらず5年生存率は3割とまだまだ厳しい.結核がそうであったように,新しい抗癌剤の登場で治療選択肢が増え,緩和ケアからより精力的な治療が実施されることになる.進行肺癌に化学療法を行うと生存期間を延長できるかという課題について,化学療法を最善の支持的療法(Best Supportive Care)と比較した16の非小細胞肺癌の無作為対照研究(平均対象例175例)では、化学療法の治療効果は7~42%で有効率は生存率と相関し,生存率は化学療法が優れていた4).
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.