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レニン・アンジオテンシン系と腎障害
腎臓での血圧調節機構として,圧・利尿機構,糸球体内圧,尿細管糸球体フィードバック,腎血流量,交感神経などが挙げられるが,最も重要なのはレニン・アンジオテンシン系である.腎臓において,レニン・アンジオテンシン系は,輸出細動脈をより強く収縮させるとともに,近位尿細管および集合管でのNa再吸収を亢進させる.つまり,糸球体濾過を保ったまま,濾過されたNaの再吸収を増加させる作用を持つ.これらの作用は主にアンジオテンシン1型(AT1)受容体を介して行われる.アンジオテンシン2型(AT2)受容体は腎髄質などに発現しており,刺激によってブラジキニン・NOの産生の増加,腎輸出入細動脈の拡張作用,細胞増殖の抑制作用がみられる1).
腎には自動調節能力(筋原反応と尿細管糸球体フィードバック)があるため,全身血圧の上昇により腎の灌流圧が上昇しても輸入細動脈の血管抵抗が上昇し,糸球体内圧は上昇しない.しかし,高血圧の持続,加齢などで輸入細動脈の機能が障害されると,糸球体内圧が上昇する2).慢性腎疾患では残存糸球体の輸入細動脈が拡張し3),糸球体の肥大,単一ネフロンの濾過量増大がみられる.機能ネフロンが減少すると残存ネフロンに過剰濾過が加わり,糸球体高血圧になり,蛋白濾過量増加・内皮細胞障害・メサンギウム細胞増殖・メサンギウム基質増加が生じ,糸球体硬化が進行する.また,腎機能障害により圧利尿曲線が維持できなくなり,体液量が増加して高血圧を発症する4).腎間質に出現する線維芽細胞にはAT1受容体が発現しており,これが間質線維化に関与するとされる5).糖尿病では腎血流が増加し,過剰濾過の状態となり糸球体内圧が上昇,糸球体肥厚・メサンギウム基質増加などを来し糸球体硬化症に至る4).また,糖尿病では輸入細動脈の異常な拡張がみられる3).腎疾患における蛋白尿の発症機序の一つに糸球体内圧上昇があり6),これにより蛋白の濾過量が増え,尿細管での蛋白再吸収量が増し,間質の炎症・TGF-βの合成・尿細管細胞の筋線維芽細胞への分化などを引き起こす7).糸球体内圧上昇の原因として輸出細動脈血管抵抗が重要で,その調節にアンジオテンシンIIが大きく関わっていることはさきに述べたとおりである.
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