特集 生物進化の分子マップ
12.ホルモン/生理活性ペプチド
レニン-アンジオテンシン系の進化
竹井 祥郎
1
,
渡辺 太朗
1
Yoshio Takai
1
,
Taro Watanabe
1
1東京大学海洋研究所生理学分野
pp.430-431
発行日 2006年10月15日
Published Date 2006/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100296
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レニン-アンジオテンシン系は循環調節や体液調節に重要な酵素・ホルモン系である1)。腎臓から分泌されるレニンは,肝臓で作られる血漿タンパク質であるアンジオテンシノゲン(AGT)に作用して,N末端からアンジオテンシンⅠ(ANGⅠ)を切り取る。ANGⅠは肺循環を通る間にアンジオテンシン変換酵素(ACE)により活性型のANGⅡに変換される。ANGⅡは強力な血管収縮作用,飲水誘起作用,アルドステロン分泌促進作用などを示し,ACE阻害剤やANGⅡ受容体のアンタゴニストは心不全,高血圧,水・電解質代謝異常などの治療において,重要なターゲットとなっている。
これまでに,AGTを含む血漿とレニンを含む腎抽出物をインキュベートしてANGⅠを産生し,それを精製することにより多くの動物でANGⅠの配列が決定されてきた(図1A)。調べられた動物は,円口類に属するヤツメウナギから哺乳類まで多様である2)。しかし,系統的に原始的な種では血漿AGT濃度やレニン活性が低く,十分な量のANGⅠを生成するためには百ミリリットル単位の血漿と数十グラムの腎臓組織を必要とする。そのため,まれにしか捕獲できない種や腎組織が未発達なメクラウナギなどでは,この方法を用いて配列決定に十分な量のANGⅠを生成することは不可能であった。
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