特集 副作用を見逃すな!
ミニレクチャー
②副作用対策のためのオーダーメイド医療
鎌谷 直之
1,2
1東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター
2理化学研究所遺伝子多型研究センター
pp.41
発行日 2006年1月1日
Published Date 2006/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100011
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- 文献概要
個人にとって最も基本的な情報がゲノム配列の情報であることがわかっていながら,これまでそれを観察することなく医学・医療が行われてきた.しかし,個人のSNP(single nucleotide poly-morphism:1塩基遺伝子多型)の解読が日常的になるにつれ,ゲノム情報に基づいた医療は医学・医療に革命をもたらすと期待されている.
最近の急速なゲノム情報の整備と比較的安価で効率的なSNPタイピング手法の普及を基礎にして,薬物の副作用対策のために個人のゲノム情報を用いることも現実的になってきた.遺伝と薬物の副作用の関係は古くから知られており,G6PD欠損症と薬物性溶血性貧血の関係や,thiopurine methyltransferase欠損症と抗癌薬6-MP(6-mercaptopurine)の重症副作用との関係,dihydropyrimidine dehydrogenaseと5-FU(5-fluorouracil)の副作用との関係などが有名である.近年になって,多くのSNPの検索が効率よくできるようになり,より頻度の高いSNPが副作用に関係している可能性が高まっている.以上の状況に基づき,ゲノム薬理学(pharmacogenomics)を薬物の認可に取り入れていくという方針がFDAにより打ち出され,ゲノムデータを含んだ薬物承認申請のガイダンスが発表された.米国ではすでに添付文書にゲノム配列による副作用の情報を含んだ薬物が発売されたり(たとえば多動症の薬物Strattera(R)),特定の人種(黒人)のみに有効性が認められるという薬物(心不全治療薬BiDil(R))が承認され発売されている.
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