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特集 肺の再生医療―現状と展望
肺気腫の骨髄細胞による治療
Treatment of Pulmonary Emphysema with Bone Marrow Cells
青柴 和徹
1
Kazutetsu Aoshiba
1
1東京女子医科大学第一内科
pp.137-140
発行日 2005年2月1日
Published Date 2005/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100018
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はじめに
肺気腫は肺胞の破壊と消失を特徴とする慢性・進行性の疾患である.現在のところ肺気腫に対する根本的な治療法は開発されていないが,消失した肺胞の再形成(realveolization)をめざす再生医療は肺気腫の治癒を可能にする究極の治療手段になるものと期待される.すでに皮膚,軟骨,心臓,肝臓など構造が比較的単純な臓器については臨床応用に向けた研究が行われているが,極めて複雑な構造と機能を有する肺の再生医療については基礎研究が始まった段階である.
ヒトの肺胞形成は胎生28週頃から始まり,出生後2~8歳頃までに終了すると考えられている.したがって,幼小児期においては失われた肺胞の再形成も可能であるが,成人期や老年期の肺においても肺胞が再形成するという明確な証拠はない.しかし,これまで再生しないと考えられていた脳や心臓にも再生能力があると知られたことから,肺についても同様の可能性が期待されている.肺胞が再形成するためには肺胞の原基となる幹細胞の動員と活性化が必要になるが,近年,骨髄中に肺胞の幹細胞が含まれているという研究成績が公表されたことから,これを治療に応用しようという試みが行われている.
本稿では,これらの研究成績を紹介して肺気腫に対する再生医療の可能性について論じたい.
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