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特集 肺の再生医療―現状と展望
横隔神経の再建
Phrenic Nerve Injury and Reinnervation
小林 淳
1
Jun Kobayashi
1
1市立島田市民病院呼吸器科
pp.127-135
発行日 2005年2月1日
Published Date 2005/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100017
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はじめに
横隔膜は膜状の筋肉であってドームの形をしており,収縮によって腹腔側へ変位し,また胸郭を広げることによって吸気筋として働く.通常吸気の大部分は横隔膜の収縮変位が与るものである.横隔膜の運動神経支配は全て左右の横隔神経により,ヒトでは第3~5頸神経根由来である.
横隔神経損傷は数は多くないが時折みられる.神経損傷の原因として,①頸部,胸部の外傷,②頸部-胸部の腫瘍手術や心臓手術,低体温手術などでの医原性損傷,③腫瘍の浸潤による横隔神経麻痺などが挙げられる.
横隔神経の損傷は神経麻痺を起こし,支配筋である横隔膜の機能を低下させ,呼吸障害をもたらすことがある.労作時呼吸困難,起坐呼吸,吸気時の腹壁の奇異運動,肺活量の約50%近い減少,背臥位になると肺活量の30%以上の減少などが典型的な症状,所見である1).臨床的な障害がすべての患者に起こるわけではない.しかし,全ての患者に横隔膜機能の低下が起こり,呼吸筋の予備力を減少させる.新たに何らかの負荷がかかったとき,患者が呼吸不全に陥るリスクは健常者に比べてはるかに高い.
横隔神経の損傷と再建を考えるにあたり,これまでに四肢などの末梢神経の研究や臨床応用で神経の損傷や再生について蓄積されてきた多くの知見が適応できる.
本稿では,末梢神経損傷と再建についての基本的知識をまとめたうえで横隔神経損傷と再建について述べる.
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