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胃癌の分子標的治療薬の開発に伴い,胃においても遺伝子変異の解析が大きく進んだ.これに伴い,組織型に対応した特徴的な分子異常が次々と明らかにされてきている.2019年に改訂されたWHO分類の中で,世界的な大規模分子プロファイルであるTCGA(The Cancer Genome Atlas)では,胃癌の分子病型をCIN(chromosomal instability)型,GS(genomic stable)型,EBV(Epstein-Barr virus)関連型,MSI(microsatellite instability)陽性型の4型に分類していることが紹介されている.これからの胃癌の診断や治療の理解には,序説で九嶋が述べているように内視鏡所見,病理組織所見,分子異常の3点セット(肉眼像を加えると4点セット)からのアプローチが欠かせなくなるだろう.
そこで本号では,胃癌の分子異常に焦点を当てて企画を検討した.企画小委員は九嶋亮治,菅井有,八尾建史の各氏と筆者である.しかし,企画をまとめるのに苦労した.何せ分子異常/遺伝子変異はまだまだ臨床家にはなじみの薄い分野である.どうやったら本誌らしさを出せるのか? 内視鏡所見と病理組織学的所見のきちんとした対比がなされるか? 同一病変の病理組織所見と肉眼所見,そして内視鏡所見を対比検討すれば精度が上がるわけだが,病理医に内視鏡所見まで書いてもらうのは酷である.逆もまたしかり.整合性を持たせるために同一施設で病理組織所見〜分子異常,そして同一病変の内視鏡所見を書いてもらえるか? 分子異常に対応する内視鏡的特徴が出てくるのか? 美麗な画像が得られるか? 内視鏡所見のみならず臨床像も必要ではないか? 侃々諤々の議論の末,ようやくまとめたのが本号である.というわけで各主題において病理および臨床の執筆を可能な限り同一施設にお願いした.
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