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編集後記
長南 明道
pp.1200
発行日 2009年6月25日
Published Date 2009/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403101712
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食道胃接合部に関しては,本邦では西らの分類が,欧米ではSiewertらの分類が一般的であったが,今回の「食道癌取扱い規約第10版」では食道胃接合部癌は“病理組織型にかかわらず,食道胃接合部の上下2cm以内に癌腫の中心があるもの”と定義された.この新定義に従って食道胃接合部腺癌を食道側,胃側から改めて見直そうというのが本企画である.食道胃接合部には,ごく狭い範囲に胃底腺,胃噴門腺,食道噴門腺,固有食道腺,Barrett粘膜,異所性胃粘膜,食道扁平上皮が存在し,胃噴門部癌,食道扁平上皮癌,食道腺癌,Barrett食道癌が発生する.しかし食道胃接合部はもともと狭いうえに,収縮が加わるため観察が難しい.また,逆流性食道炎,Barrett食道,食道裂孔ヘルニアを併発すると,その所見はさらに多彩となり診断が難しくなる.本誌で大倉らは免疫組織化学染色を用いて食道胃接合部腺癌の粘液形質,発生母池,背景粘膜などを詳細に検討し,領域による違いを明らかにしている.また,加藤らは精密X線では88%でSCJを描出できると言う.驚くべき描出率である.島岡らのX線診断,高橋らのNBI拡大内視鏡診断も緻密な対比により説得力がある.さらに藤崎らは連続切片による立体構築を行い,NBI拡大内視鏡で捉えられる分化型癌の血管構造と腺管構造の関係を検討している.しかし,食道胃接合部腺癌の診断に関しては,まだまだ解明されていないことが多い印象である.今後の研究の進展に期待したい.なお,各論文を通読してみると,機器の進歩に加えて臨床側の診断にかける情熱が大きな鍵となりそうである.
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