Japanese
English
今月の主題 内視鏡医も知っておくべき病理診断リファレンス—下部消化管腫瘍
序説
小腸・大腸腫瘍の病理診断
Introduction
松本 主之
1
Takayuki Matsumoto
1
1岩手医科大学消化器内科消化管分野
キーワード:
下部消化管
,
WHO分類
,
拡大内視鏡
,
消化管病理
,
臨床病理学
Keyword:
下部消化管
,
WHO分類
,
拡大内視鏡
,
消化管病理
,
臨床病理学
pp.263-264
発行日 2021年3月25日
Published Date 2021/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403202261
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
消化管腫瘍の病理診断の代表的なリファレンスである2019年版WHO分類は,臓器別チャプターとして食道,胃,小腸・十二指腸乳頭部,虫垂,結腸・直腸,および肛門管に大別されている.他方,今回本誌で企画された「内視鏡医も知っておくべき病理診断リファレンス」は2号で完結する企画である.55巻4号(2020年4月号)が上部消化管腫瘍の特集号であり,十二指腸乳頭部以外の食道,胃,十二指腸病変が取り扱われた.続編である本号は下部消化管腫瘍がテーマとなっており,空腸,回腸,および大腸病変の特集号となっている.このように,本特集とWHO分類では十二指腸病変の取り扱いが若干異なっている.これは,本特集が内視鏡検査を念頭に置いて企画されたためである.
本誌における下部消化管腫瘍の臨床病理学的研究の流れには,いくつかのターニングポイントが存在している.第1は,大腸表面型腫瘍の存在と拡大内視鏡検査の意義が明らかになった1990年前後である.この時期に大腸上皮性腫瘍の診断が大きな争点となり,本誌においても幾度となく特集号が企画された.その後,症例の集積と自然史の解明に加えて分子生物学的解析により,大腸上皮性腫瘍の分類は一定の見解に至っている.これは,臨床医と病理医による膨大な研究成果が結実したものと考えられる.同様の議論は,21世紀になり存在が明らかとなった大腸鋸歯状病変でも繰り返されたが,本邦からの優れた研究成果が相次いで報告され,短期間のうちに一定のコンセンサスが得られている.これらの大腸腫瘍に関する議論の主役は,十分な病理学の知識を有する臨床研究者と臨床を熟知した病理研究者であったと言える.
Copyright © 2021, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.