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はじめに
慢性炎症性腸疾患の臨床像は多彩である.加えて,臨床像や消化管病変の特徴は自然経過や治療修飾により変化する.したがって,これらを正しく鑑別するには消化管病変の特徴のみならず臨床経過や種々の臨床検査成績などから総合的に判断する必要があるが,慢性炎症性腸疾患の診療においては,時として診断困難な症例に遭遇する.
このような“診断困難な慢性炎症性腸疾患”は狭義の炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease ; IBD)であるCrohn病(Crohn's disease ; CD)と潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis ; UC),および腸管Behçet病(Behçet disease ; BD)との鑑別に難渋する場合と,診断名を想起しなければ診断できないような希少な炎症性腸疾患に大別される.本誌では,41巻6号「非定型的炎症性腸疾患—診断と経過」ならびに50巻7号「診断困難な炎症性腸疾患」において,前者に焦点を当てた特集が組まれている.一方,希少疾患に含まれる“免疫異常に伴う消化管病変”については,40巻8号「免疫異常と消化管病変」ならびに46巻3号「免疫不全状態における消化管病変」で取り上げられている.しかし,ゲノム解析技術の進歩に伴い,52巻11号で特集された“非特異性多発性小腸潰瘍症(chronic enteropathy associated with SLCO2A1 ; CEAS)”に代表されるように,遺伝子異常に起因する,あるいは関連が示唆される疾患が近年注目されている.さらに,新たな癌免疫療法である免疫チェックポイント阻害療法では,IBDに類似した消化管病変が出現することも明らかとなってきた1).遺伝子異常と免疫異常は表裏一体をなすことが多いため,本号では「遺伝子・免疫異常に伴う消化管病変」に関する特集を企画した.
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