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編集後記
岡部 治弥
pp.802
発行日 1974年6月25日
Published Date 1974/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111932
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本月号は少しく趣向をかえて,胃腫瘍を除いた上腹部触診可能腫瘍の診断の現況にその焦点をあててみた.あえて触診可能例としたのは胃腫瘍を除いては,1)上腹部腫瘍のそのほとんどが現在なお,発見のキッカケは触診であり,さらに 2)触知はしえても,触診のみではその確定診断はきわめて困難であり,むしろ不可能という事実からである,つい10年前までは試験開腹のみが唯一の確定診断法であったが,本誌にみられるごとく現在では血管造影を初めとして,きわめて多くの診断手技が開発され,多くの腹部腫瘍について術前に,発生臓器や性状はもとより,転移の有無や,手術の適応,根治手術の可能性等,手にとるように的確な情報が得られる状態となってきている.とはいえ,腫瘤の触診はすでに古典的診断手技とさえ見なされるほどの進歩をとげた早期胃癌の診断学に比較すれば,上腹部腫瘍の早期診断はまだ全くその緒にさえついていないといわざるを得ないのが実状である.
腹部腫瘍には,触診がいまなお無視できぬ重要な発見のキッカケであり,前述のごとく現在では,開腹することなしに確定診断がつけられるようになったとはいえ,その時点では大多数はすでに手遅れであり根治手術は不可能である.この現実を十分に認識していただき,真の早期診断学樹立の意欲を若き研究者に燃やしてもらう端緒ともなれば本誌編集者の企画は成功したことになる.
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