--------------------
編集後記
丸山 雅一
pp.928
発行日 1986年8月25日
Published Date 1986/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110311
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
本号には,読みごたえのある論文がそろった.まず,序説を担当した市川氏の問題提起の明快さが期待感を膨らませてくれる.望月氏のBorrmannの原著に関する記載は,科学論文の翻訳においてそれぞれに異なる言語が意味するものの対応性を厳密にしなければならないことを強調すると共に,外国文献の読み方の基本,それを批判する作法などを教えてくれる.氏は日本流のBorrmann分類にBorrmannの名を冠することは不合理と断じている.とはいうものの,この分類があったればこそ,診断,外科,病理の三角関係が生じ,わが国の胃癌の研究が今日の発展をみたことを認めないわけにはいかない.
中村氏は胃癌の組織発生の理論を支柱に独自の肉眼分類を提唱し,渡辺氏の分類の基本は中村氏と同じようであって実は全く異なるように思える.アメリカのMingが喜びそうな感じだが,肌理の細かさがMingとは随分と違う.岩永,紀藤の両氏は外科の立場からあくまでも“早期癌類似進行癌”に市民権を与えようと必死の記述を試みている.そして,岡島氏は胃癌研究会の肉眼分類の責任者として極めて穏健な表現に終始しながらも氏の主張を余すところなく言い切っている.
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.