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本書は「新臨床内科学」のコンパクト版と銘打っているが,今はやりの縮小版ではなく,ダイジェスト版であるところにその特徴がある.ダイジェスト版であるから当然,一見物足りない面もあるが,親本を参考にすることは当然の前提と言えよう.親本そのものも,“ベッドサイドですぐに,しかも治療に役立つガイドブック”を目指していたようであるが,1,500ページを超える大書となってしまい,その目的に合わなくなったらしい.それを単に縮小版にしないでダイジェスト版にするというのは,新しい本を1冊作り直すに等しいので大変な作業であったと思われる.そして,本書はその目的を達している.
近年,医学の驚異的な進歩に伴って臨床に必要な医学知識は膨大なものとなり,しかも刻々変化していくのであるから,いかに若い医師であってもこれらの知識をup to dateにしていくことは不可能に近い.もちろん,狭い専門分野に限ってならばそれも可能であろうが,内科医として病気よりも患者を診るという立場に立てば,専門分野の知識のみというわけにはいかないのは当然である.特に最近では患者の高齢化現象のため,一人の患者に多くの疾患が同居している.したがって,例えば高血圧の患者を長期間診ていて,結腸癌などを見落としているといったことは頻繁に起こっている.患者さんは内科の医師に診てもらっているのだから安心しているわけで,このような見逃しは,信頼の裏切りであるし,訴訟問題になっても仕方がない.このような事態を避けるためにはともかく,編者らも言うごとく,なるべく多くの医学情報を身につけることである.そのことが前提となって初めて医学的思考過程,いわゆるGedanken Gangの修得が可能となる.
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