消化管病理基礎講座
消化管生検に臨床情報は必要か?
小池 盛雄
1
1東京医科歯科大学病因病理学
pp.1533-1536
発行日 2000年11月25日
Published Date 2000/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104916
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はじめに
病理医は各種の臓器,組織の疾患の病理診断に携わっており,消化管生検診断はその一部にすぎない.その上,病理医がすべて消化管病理を専門としているわけではない.肝生検や腎生検では病理形態学的変化が臨床所見あるいは臨床検査データとどのように関わっているかを判断し,今後の病状の進展を予測し,必要な治療を行う基礎となる重要な診断である.時には治療前後の形態変化を比較して治療効果判定をすることもあり,検査データ上の改善が必ずしも病変の基本的改善とは並行しないことが判明したり,更なる加療の必要性を報告することもある.
消化管生検診断は,直接臓器を肉眼観察できない腎生検や腹腔鏡を除けば表面構造を観察できない肝生検診断とは異なり,内視鏡的に肉眼観察が可能な病巣からの組織採取である点が大きく異なる.熟練した内視鏡医にとっては内視鏡観察のみで病変の診断が可能であることも多いし,大きく,明瞭な病巣を形成する進行癌も内視鏡所見のみで診断は可能で,詳細な組織型診断を除けば病理組織学的診断を必要としないこともありうる.消化管病変は多様で,内視鏡医が何を考え,何を求めているかを知ることが,正確な病理診断を下すために必須である.病理診断が単なる病理検査ではないという点を認識してもらうためにも,消化管生検診断に臨床情報が必須であることを強調したい.裏返せば“病理医は八卦見か?”という問
いに置き換えられることになる.病理所見を正確に記載してさえあれば後は内視鏡医がそれを参考にして判断するということで良いのであろうか?
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