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書評「消化管の病理と生検組織診断」
岡部 治弥
1
1北里大学
pp.816
発行日 1980年8月25日
Published Date 1980/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112718
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何日間かかかって,時間をひろいながら,本書を読了したが,大変教わることの多い,また興味津々たる内容で,各所で深い感銘をうけた.長年にわたり消化管の診断学にたずさわって来た,また今後もたずさわるものとして,同じく今この道を歩む人,今から歩もうとしている若い医師にとって,本書は必読の書であると断言してはばからない.
本書には2つの特徴があり,今までに類書を見ないと思う.本邦において,早期胃癌を中心として,病理学者との緊密な共同研究のもとに,胃のX線および内視鏡診断学の研究が極めて熱心に行われ,早期胃癌をはじめとして胃の診断学が世界をリードする素晴らしい進歩を遂げた時代は,すでにもうそう新しい事ではない.その当時から次々に現在に残るすぐれた病理学書が出版されたが,これらはすべて胃癌ないし胃疾患を対象としたものであり,本著者のお一人中村教授も胃癌に関する名著をあらわしておられる.しかしこれらはすべて胃疾患の,それも切除材料を検索の材料としたものである.それらに対し,本書の内容は,わずかに小腸を除き,現在内視鏡直視下にて組織細片の採取可能な消化管の広汎な領域の生検材料を主体とした病理組織学的診断学の研究の成果を,広汎かつすぐれた材料をもとにして詳述したものである.その内容については,著者お二人の恩師である太田邦夫東京都老人総合研究所長,先輩である菅野晴夫癌研所長の序に精しく紹介されている.特に太田先生は本書は本邦消化器腫瘍学発展の一時期を劃するものであり,将来この領域の発展の鍵となるべきものが含まれていると激賞している.
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