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書評「消化管の病理と生検診断」
鶴田 修
1
1久留米大学・消化器内科学
pp.30
発行日 2011年1月25日
Published Date 2011/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403102103
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今から約25年前,故白壁彦夫教授が司会をされていた研究会に久留米大学からIIc型早期大腸癌症例を提示したことがあった.外科手術症例で標本の張り付け方が悪く,X線,内視鏡などの画像とマクロの対応が困難となってしまい,白壁教授からかなり強烈なお叱りを受けて立ち往生している時に,当時筑波大学教授であった本書著者の中村恭一先生から「病理学的には頭の中で切除標本を伸ばせば,マクロと画像そして病理組織像の対応は可能である」というお助けの言葉をいただき,その場をなんとか切り抜けることができた.先生のお優しさには今でも大変に感謝している.中村先生は臨床の疑問点を理解され,真摯に答えようとされる.先生の下で研修した多くの医師が日本各地で消化管画像診断学のリーダーになっていることにも納得がいく次第である.
さて,共著者である杏林大学・大倉教授から「本書は1980年に中村先生と故喜納勇教授の共著で出版された『消化管の病理と生検組織診断』を時代に合わせて改訂し,足りない部分を補充したものだ」というお話を伺っていたが,実際読ませていただくと前書と比べてその内容の充実ぶりに驚かされた.全消化管(食道,胃,十二指腸・小腸・虫垂,大腸,肛門管)の解剖,形成異常,炎症性疾患,非腫瘍性疾患,腫瘍性疾患について,カラーのマクロ写真,切除標本・生検標本の病理組織写真,内視鏡写真,図表を駆使して漏れなく記載・解説されており,非常にわかりやすく,特に腫瘍の項などは中村先生の癌発生とその組織像・診断に関する哲学までも十分に感じることのできる内容となっている.
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