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書評「食道・胃静脈瘤の病態と治療」
武藤 輝一
1
1新潟大学
pp.1244
発行日 1996年9月25日
Published Date 1996/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104308
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このたび,「食道・胃静脈瘤の病態と治療」と題する待望の書が上梓の運びとなった.編集者は,現在わが国でこの分野の臨床と研究の両面において第一人者と言われる青木春夫,小林迪夫の両先生であり,執筆者を含め,この分野のエキスパートを網羅し60名に及んでいる.そして執筆者が編集者の“新しい概念に基づき,最新の現場について記述してもらう”という方針に沿いながら,限られた紙面の中で精一杯記述しているのが特徴と言えよう.
周知のごとく門脈圧亢進症の概念は,Whippleの考え方に局所門脈系のhyperdynamic stateの知見が加わって,現在では理解しやすいものとなった.本書では,この概念を基礎に,大きく2つに分けて記述されている.前半は“門脈圧亢進症,食道・胃静脈瘤の病態生理”である.第1章の循環異常の病態生理では門脈領域の循環異常が中心に記述されているが,全身,肝,脾,消化管壁などの循環異常についても述べられている.第2,第3章ではそれぞれ胃病変および基礎的疾患の特徴について述べられている.後半では,前半での病態生理からみての“食道・胃静脈瘤に対する治療”が記述されている.ここでは食道・胃静脈瘤の内視鏡所見(第1章)の記述があった後,主として食道および噴門部の静脈瘤に対する各種の外科的治療と非観血的治療の実際(第2章)について詳しく述べられ,この後の各章で胃穹窿部の孤立性静脈瘤,各種治療の予後と再発,胃病変の治療法の選択基準などが記載されている.
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