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2001年4月に池上直己,福原俊一,下妻晃二郎,池田俊也の4氏の編集による「臨床のためのQOL評価ハンドブック」が医学書院から刊行された.患者のQOLという言葉が医療の現場で使われるようになってから久しいが,QOLがkey wordのような形で使われることが多く,その定義は必ずしも明確なものではなかった.QOLを問題にするならば,当然その評価が必要であり,現在国際的,国内的に広く用いられている評価方法が存在しているが,臨床家の多くは評価の尺度として有名なSF-36などについてもあまり知識がなく,漠然とした概念でQOLという言葉を使っているのが現状である,
本書はそのQOL評価のためのハンドブックとして刊行されたものであり,上記の4人の編者と20人の執筆者(編者も含む)によってQOLの評価に関する説明が詳細になされている.本書の内容は3部に分かれており,第1部の総論編では,「いまなぜQOLか―患者立脚方アウトカムとしての位置づけ」とQOL測定理論について,第2部の包括的尺度の所ではSF-36を中心とする健康プロファイル型尺度とEQ-5Dを中心とする選択に基づく尺度のことが説明されている.また第3部の疾患特異的尺度では,がん,呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患,気管支喘息など),糖尿病,慢性腎疾患,泌尿器疾患(排尿障害,男性性機能障害),消化器疾患(胃食道逆流症,アカラシア,炎症性腸疾患,慢性肝炎,慢性膵炎など),精神科領域(うつ,睡眠障害),神経内科疾患(てんかん,アルツハイマー,パーキンソン病,片頭痛),リウマチ疾患,骨粗鬆症が取り上げられ,これらの疾患におけるQOL評価法が紹介されている.疾患特異的尺度というと,多くの人はまずがん患者のQOLを思い浮かべるが,実際には上記のように数多くの疾患でQOLの評価が行われていることに驚かれる方が多いと思う.
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