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書評「胃と腸ハンドブック」
青木 照明
1
1東京慈恵会医科大学・第2外科
pp.56
発行日 1993年2月26日
Published Date 1993/2/26
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403106085
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食道・胃・腸を中心とした,消化器の見事な形態診断学の集大成である.わが国で消化器病学に携わる医師なら,少なくとも月刊雑誌「胃と腸」を知らぬものはいないであろう.本書はまさにその26年間の「胃と腸」誌の集大成と言える本である,
1966年(昭和41年),ちょうど「胃と腸」の創刊号が世に出たころ,私は米国シアトルのワシントン州立大学附属病院で臨床病理学の2年間のコースを修了したころであった.創刊の第1巻1号は1966年4月であるが,米国に第1号が届いたのは夏休みごろであったろうか,7,8月ごろであったと思う.頁を開いたところに増田論文・崎田論文の美しい内視鏡カラー写真が載っており,早期胃癌研究会代表村上忠重先生の創刊の辞が載っていた.しかし私が覚えているのはそのせいばかりではなかった.当時私と病理を一緒に勉強してきた外国の友人が,英文のサマリーと英文flgure, table legendsのついた「胃と腸」を私に示して(その当時,日本から送られてくる雑誌としては珍しく,「胃と腸」は上質の紙を用いていた),白壁彦夫先生の早期胃癌に関するレントゲン診断における「早期胃癌」“early gastrlc cancer”の分類について熱心に質問されたのである.早期“early”とリンパ節転移の関係が理解できないと彼にしつこく食い下がられたのを覚えているのである.いずれにしても当時レントゲンによる二重造影法が画期的なものとして米国で受けとめられ,また日本の内視鏡技術に対して感嘆している様子は,私は全く関係のない単なる日本人の医者であったにもかかわらず,鼻が高く感じられたことをよく覚えている.
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