#総合診療
#書評:—臨床・研究で活用できる!—QOL 評価マニュアル
齋藤 信也
1
1岡山大大学院・保健学
pp.709
発行日 2024年6月15日
Published Date 2024/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429204847
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医療関係者でQOLという言葉を知らない人は皆無ではないかと思う。私は外科医であるが、外科ではこれまで根治性を重視し、QOLを軽視しがちであった歴史がある。そこに乳房温存や、機能温存手術が導入されるなかで、それがもたらすQOLの改善を測ってみたいという素朴な気持ちが生じてくる。ところがいざQOLの測定となると、使用可能な日本語版尺度がなかったり、あったとしても、不自然な日本語で、それをわかりやすく変更しようとすると「そんなことをしてはいけない!」と言われたり、さらには「勝手に使うと著作権者から訴えられるよ」などと脅かされると、少し気が萎えてくる。加えて、信頼性とか妥当性とか、測定特性とか計量心理学の用語が頻出すると「うーん」となってしまいがちである。
そこに現れた待望の一冊が本書『臨床・研究で活用できる! QOL評価マニュアル』である。編者の能登真一先生は、理論と実践の両面にわたり、斯界をけん引してきたリーダーでもあるが、同書を「臨床・研究で『活用』できる『マニュアル』」と明確に性格づけている。背景となる理論は過不足なくコンパクトにまとめられている上に、「尺度別」に具体的な記載がなされている点がユニークである。「マニュアル」としてその尺度の特徴・開発経緯・日本語版の開発・版権の使用に当たっての注意点・質問票そのもの・スコアの算出方法と解釈・測定特性・エビデンスが、一覧できる利便性の大きさは類書にはないものである。しかもわが国でその尺度を開発(翻訳)した当事者がその項目を執筆しているということで、版権のことも具体的でわかりやすく記載されている。これ一冊あれば、QOL測定のハードルはとても低くなる。
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