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編集後記
八尾 隆史
pp.1586
発行日 1999年11月25日
Published Date 1999/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403102884
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本号は,最近の胃癌診断において形態的診断がおろそかになっているのではないかという危惧から企画された.つまり,胃生検がルーチン化され,異常粘膜を発見すると即生検し病理診断に頼る臨床医が増えているのではないか,これまで諸先輩方が築き上げてきたすばらしい形態診断学がすたれてはいないかという危惧である.
本号では,内視鏡像と組織像の対比の集計から内視鏡による肉眼的診断はかなり正確になされていることがわかったが,一方で良性と判断しながらもかなりの数が生検されているのが現状である.それは,内視鏡的に良性様所見を呈する癌が存在することをわれわれは知っているからである.そして,そのような癌(胃炎様所見の癌や微小癌など)の頻度や臨床病理学的特徴が解析され,典型的な症例が呈示された.また,生検偽陰性例は癌自体の形態的特徴の問題以外にも,癌組織が採取されにくい病変(スキルスや粘膜下腫瘍様癌)の存在や異型の低さ(超高分化腺癌)による病理診断の問題も指摘されている.生検でGroup ⅢあるいはGroup Ⅴと診断された病変の臨床的取り扱いについても言及され,生検診断における臨床的・病理的問題点が浮き彫りにされた.
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