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本号「虚血性腸病変を整理する」の企画を江﨑幹宏,佐野村誠とともに担当した.2013年に「虚血性腸病変」という表題で同様のテーマが組まれて11年経過し,その前は1993年(31年前)にも同様のテーマが組まれている.時代とともに検査技術の進歩,新たな疾患概念の登場,病態や原因の解明の進歩のため,定期的に疾患を見直し整理する必要がある.虚血性腸病変の原因は多彩であり,しかも複数の因子が影響して発生するものもあるので,病態により正確に分類するのは困難である.
江﨑は序説でその分類困難な虚血性病変を原則的な病態に基づき,血管の種類(動静脈の違いと血管の大きさ)と血管閉塞の有無の組み合わせにより大まかに分類し,虚血性腸病変の全体像を理解しやすいように図説している.この分類は各疾患の詳細を理解と整理に有用である.病理学的事項に関しては,田邉らが担当した一般的な病理学的特徴に加え,血管炎関連の病理は宮崎が担当し,その専門的立場から血管の変化の詳細な組織像と鑑別診断のポイントが示されている.特発性虚血性腸炎は熟知されている疾患であるが,松野らから,多くの鮮明な画像を提示していただき,虚血性腸病変の基本を改めて学ぶことができた.壊死性虚血性腸炎と非閉塞性腸管虚血症(NOMI)に関しては前回も詳細に解説されていたが,今回は小林らが両者の相違点はあるものの共通の病態として包括して,多彩な画像を示し解説しており,これらの疾患の理解が深まる内容となっている.IgA血管炎による虚血性腸病変については古くからよく知られ,皮膚の紫斑が出現する前に十二指腸病変がみられることがあることも知っていたが,大川らが紫斑のないIgA血管炎を提示しているのには驚いた.記載には生検で血管炎はなかったとされているが,病理医としてはどのような病理組織像を示していたのか興味深いところであるが,生検病理組織像の提示がなかったのが残念であった.腸間膜静脈硬化症に関しては,臨床像や病理組織像は十分に把握され原因も解明されつつあるが,清水らはこれまでの知見に加えて222例もの全国集計のデータも合わせて鮮明な臨床画像とともに総括し,本疾患の理解がさらに深まる内容となっている.そして特筆すべきは原因とされる漢方薬服用の継続中の症例に加え,服用を中止した症例の経過を画像とともに示し,服用中止で病像が軽減することも示している.同様の症例は佐野村らも1例報告で掲載しているので,合わせて読んでいただきたい.また,中村らは小腸虚血性病変の病態とそれに対応するCT所見を提示しており,CT像による診断法を解説している.迅速な腸管虚血の診断が致死的状態への進展防止となるので,CTの有用性と重要性が示されている.
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