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編集後記
八尾 隆史
pp.1430
発行日 2004年9月25日
Published Date 2004/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104265
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主題の喜多嶋論文で記載されているように,大腸研究会のsm癌取り扱いプロジェクト研究において,非有茎型の場合リンパ管浸潤の有無にかかわらず深達度が垂直浸潤距離1,000μm以下のsm癌ではリンパ節転移を認めないという結果が得られた.多施設から収集した材料をもとにプロジェクト研究が行われこのような結果が得られことに大変意義があり,sm癌の取り扱いに有用な指標が示された.ただし,この1,000μmという距離が切除前に診断可能かということが最も大きな疑問であった.いくら有用な基準値であっても切除前に診断できないとなると,深達度診断は切除可能かどうかさえ判断できればあとは内視鏡切除後の病理検索に基づき治療方針を決めればよいということになりかねない.
今回のそれぞれの解析で少なくとも70%以上,施設あるいは診断方法によっては約90%の症例で深達度1,000μm以上の診断が可能であるという結果が得られ,病理学的解析により得られた“sm深達度:垂直浸潤1,000μm”が臨床的にも意義のある値であることが判明し,日本の消化管診断学のすばらしさを改めて感じる次第である.そして,病変の形態の違いや検査法の違いにより正診率が異なることや主題症例で示された問題点を熟知することにより深達度診断精度がさらに向上していくものと思われる.今後,“sm深達度:垂直浸潤1,000μm”をキーワードとして,早期大腸癌の診療・研究の新たな展開を期待したい.
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