わだい
甘草による偽性アルドステロン症
永田 直一
1
Naokazu NAGATA
1
1防衛医科大学校第三内科
キーワード:
低K血症
,
Ⅰ型受容体
,
11β―hudroxysteroid dehydrogemase
Keyword:
低K血症
,
Ⅰ型受容体
,
11β―hudroxysteroid dehydrogemase
pp.1582
発行日 1990年10月30日
Published Date 1990/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542900387
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低カリウム(K)血症の鑑別診断を進める際,尿中K排泄が高くかつ血中レニン,アルドステロン値が低い場合には,アルドステロン以外の鉱質コルチコイド作用を持つ因子の異常増加を考えることになるが,そうした病態の中で最も頻度の高いのは甘草摂取によるものである.甘草中にはグリチルリチン酸,その水解物であるグリチルレチン酸が多量に含まれているが,急性実験ではグリチルリチン酸のアンモニウム塩2~5gの投与で著明なナトリウム貯留およびK利尿がみられ,慢性実験では0.5g/日の投与で低K血症,高血圧をきたすと報告されている.わが国でよく話題となるのは,甘草含量の高い漢方製剤の服用によるものである.
グリチルリチン酸やグリチルレチン酸はステロイド類似構造を持つことから,アルドステロンの受容体に作用して電解質作用を持つものと考えられてきた.しかし,グリチルレチン酸のアルドステロン受容体への結合親和性はアルドステロンの10-4倍であること,偽性アルドステロン症の発症には副腎が無傷であることが必要なこと,またグリチルリチン酸がAddison病で鉱質コルチコイド作用を示すのは糖質コルチコイドとの同時投与の際に限ること,などの知見から,近年にはステロイド代謝に対する作用が注目されるようになった.
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