連載 偶然、でくわす精神療法—「いつものケア」からこぼれる小さなセラピー・1【新連載】
決闘の関係に御用心。遠回りすることの精神療法
橋本 和樹
1
1京都博愛会病院
pp.60-63
発行日 2025年1月15日
Published Date 2025/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134327610280010060
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ある朝の決闘
「君が叫ぶなら、僕も叫ぶ‼」
思わず「世界の中心で?」と横からツッコミたくなるようなセリフだ。白髪ロングヘアーの女性、翼さん(長期入院の利用者)に声を張り上げながらそう言ったのは、男性スタッフの石崎さんだった。私はその朝、彼と一緒に病棟を回っていた。翼さんは別の女性(彼女も長期入院だ)と二人でその部屋に暮らしている。よく晴れた外の陽気とは対照的に、灯りの消えた翼さんの部屋は日当たりが悪く、とても薄暗かった。同室の女性はすでに出かけたのか、部屋には自室に引きこもりがちの翼さん、一人だけだった。
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