図解・病態のメカニズム—分子レベルからみた神経疾患・7
トリプレットリピート病(2)—脊髄小脳変性症
池内 健
1
,
五十嵐 修一
1
1新潟大学脳研究所神経内科
pp.595-600
発行日 1996年3月10日
Published Date 1996/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402905026
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脊髄小脳変性症
脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration:SCD)は,小脳・脳幹系を中心に,脊髄や大脳基底核などの多系統に障害が及ぶ神経変性疾患である.中核となる臨床症状は,小脳性もしくは脊髄性の失調であり,そのため運動失調症と呼ばれることもある.SCDには遺伝性と非遺伝性のものがあり,さらに遺伝性の中にも,常染色体優性遺伝形式と常染色体劣性遺伝形式を示すものが存在しており,非常にheterogeneousな疾患群である.1987年の全国調査では,SCDの有病率は10万人あたり4.53人と推定されている1).
近年の分子遺伝学的研究の進歩により,従来まで原因不明とされていたSCDが,分子レベルでその病態が次々に明らかにされてきている.その結果,混乱していたSCDの診断・分類が,遺伝子変異を軸にして,世界的な趨勢として整理されつつある.その中でも,常染色体優性遺伝性SCDであるspinocerebellar ataxia type 1(SCA 1),歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症(dentatorubral-pallidoluysian atrophy:DRPLA),Machado-Joseph病(MJD)が,その遺伝子変異として三塩基単純反復配列,すなわちトリプレットリピートの過剰な延長を病因としていることが明らかになり,SCDとトリプレットリピート病との関連が注目されている.
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