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第1土曜特集 神経変性疾患の分子病態解明と治療法開発
疾患別の最新研究
リピート伸長変異による脊髄小脳変性症
-――明らかになる遺伝的知見と分子病態
Spinocerebellar degeneration caused by repeat expansion mutation
――Unveiling genetics and molecular pathomechanisms
藤野 雄三
1,2
,
永井 義隆
1,3
Yuzo FUJINO
1,2
,
Yoshitaka NAGAI
1,3
1近畿大学医学部脳神経内科
2京都府立医科大学大学院医学研究科脳神経内科学
3近畿大学ライフサイエンス研究所
キーワード:
ポリグルタミン病
,
ノンコーディングリピート病
,
リピート関連非AUG翻訳(RAN翻訳)
,
RNAシャペロン
,
アルギニン
Keyword:
ポリグルタミン病
,
ノンコーディングリピート病
,
リピート関連非AUG翻訳(RAN翻訳)
,
RNAシャペロン
,
アルギニン
pp.730-737
発行日 2025年3月1日
Published Date 2025/3/1
DOI https://doi.org/10.32118/ayu292090730
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脊髄小脳変性症(SCD)は,小脳を中心とした進行性の神経変性をきたす神経難病であり,家族性SCDの大部分が,ゲノム中のリピート配列の異常伸長(リピート伸長変異)を原因とする.ゲノム解析技術の革新に伴いリピート配列の大規模解読が可能となり,従来,原因不明とされていた家族性SCDについて,新規リピート伸長変異が次々と同定されている.SCDの病態研究や治療法の開発も新たな局面を迎えている.遺伝子翻訳領域内のCAGリピート伸長変異を共通の原因とする一群のポリグルタミン病では,異常伸長ポリグルタミン鎖を含む変異タンパク質のミスフォールディング・凝集により神経変性が引き起こされる.筆者らは,化学シャペロンであるアルギニンによる異常伸長ポリグルタミンタンパク質のミスフォールディング・凝集抑制作用を明らかにし,本知見に基づいて,脊髄小脳失調症(SCA)6型を対象とした医師主導治験を行い,有望な治療効果が示唆された.一方,非翻訳領域内のリピート伸長変異を原因とするノンコーディングリピート病では,開始コドンAUGを欠く変異リピートRNAからリピート関連非AUG翻訳(RAN翻訳)という非古典的な翻訳によって,ポリグルタミン鎖と類似した性質を持つ病的なリピートペプチドが産生されることがわかり,両病態共通の機序が明らかになりつつある.本稿では,リピート伸長変異によるSCDに焦点を当て,遺伝的研究・病態研究の新展開を概説する.

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