増刊号 Common Disease 200の治療戦略
血液・造血臓器疾患
自己免疫性溶血性貧血
杉原 尚
1
1川崎医科大学血液内科
pp.340-341
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904111
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疾患概念と病態
自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia:AIHA)は,何らかの原因により自己赤血球膜上の抗原に対して自己抗体が産生され,抗原抗体反応の結果赤血球が傷害を受け,赤血球寿命が短縮する疾患群である.本症における自己抗体は,その至適温度によって温式抗体と冷式抗体に大別されてきた.温式抗体によるものを慣習上,単にあるいは狭義の自己免疫性溶血性貧血と呼び,冷式抗体によるものには寒冷凝集素症(coldagglutinin disease:CAD)と発作性寒冷ヘモグロビン尿症(paroxysmal cold hemoglobinuria:PCH)とがある.
温式自己抗体は37℃,すなわち体温付近で最大活性を有し,原則としてIgG抗体である.実際,温式AIHA患者赤血球膜上にはIgGの結合,さらには結合IgG量やサブクラスによっては補体の結合を認める.IgG1とIgG3は補体活性化能を有しているが,IgG2は弱く,IgG4はその能力を欠いている.この結合IgGを証明するのに用いられるのが直接Coombs試験であり,陽性化には1個の赤血球に200〜250個のIgG分子結合が必要と考えられている.近年,IgG結合量の少ない,すなわち直接Coombs試験陰性のAIHAの存在も確認されており,疑わしき場合には患者赤血球膜のIgG量の確認が必要である.
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