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病変は一つではない
斎藤 祐一郎
1
1市立岡崎病院消化器科
pp.181
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904035
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57歳時に,左耳下腺癌で手術の既往のある60歳の男性.今回は下咽頭癌の診断で,耳鼻科にて下咽頭喉頭頸部食道摘出術を受けたが,術直後に吻合部狭窄をきたし,経口摂取が全くできないとのことで当科を紹介受診した.何回か内視鏡下に拡張術を行うことで,内視鏡が吻合部を通過するようになり,やれやれと思ったが,念のため,その奥を観察すると,1m領域に長さ8cmにも及ぶ進行食道癌の病変を認めた.下咽頭の病変が,食道癌の転移か原発なのかは不明であるが,食道癌は手術不可能と判断し,放射線と抗癌剤による内科的治療を行い,無事に1年が経過した.しかし,患者は声帯がなくなってしまったために,会話ができないことには変わりはない.教科書的には,頭頸部癌と食道癌は高率に合併をみることは常識であるが,下咽頭の病変を見つけた際に,食道も検査していれば治療方針も異なっていたと推測される.内科的治療で改善はしたが,悔いの残る症例である.
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