“ホッ”とspot
ある夏の夜の当直で……
安達 倫文
1
1倉敷第一病院内科
pp.193
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904041
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無医村だった地に赴き,地元民からは心からの感謝と尊敬を受けながら一心に働く父の姿を見て,医師の道を志しました.そんな私も(父とは全く異なったタイプの)医者になって早や16年になります.その間,大学および大学関連病院に13年,一般病院に3年間勤務致しました.今思えば,それぞれに思い出はありますが,特に忘れられない出来事が以下に記した事件です.
ある夏のN病院での当直の夜,消防署から一本の電話がありました.それは「事故があり,車内に閉じ込められている人の生死を確認してもらいたい」という依頼でした.私はそれまでにも当直では度々悲惨な目(例えば,飛び降り自殺で全身骨折だらけの患者に心肺蘇生を行ったり,列車の飛び込みでバラバラになった遺体を集める手伝いをしたり,溺水患者の心肺蘇生をしようとしたら,服の中からザリガニが出てきてびっくりしたりなど)に会っていましたから,「また,きたか」という程度の感じでした.しかし,迎えにきた救急車に乗りこみ,現場に着いて初めて,その事故が特急列車と自動車の衝突による大変な事故であることを知りました.
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