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積極的治療により著明な改善が得られた特発性シャント型肝性脳症の一例
瀬古 修二
1
1大津赤十字病院内科
pp.135
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904017
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高アンモニア血症を伴う意識障害症例について紹介する.症例は71歳の女性.50歳頃ネフローゼ症候群,肝硬変と診断されているが詳細不明.69歳頃より意識障害出現し入院となった.精査の結果,著明な脾腎短絡路を認め(図A),血中アンモニア濃度260μg/dlと上昇,Fisher比は1.33と低下,脳波にて7Hz徐波出現などより門脈-大循環短絡による肝性脳症と診断した.一方,肝機能ではGOT 16U,GPT 12U,総ビリルビン0.8mg/dl,プロトロンビン時間10.7秒,ヘパプラスチンテスト70%と異常を認めず,HBs抗原,HCV抗体ともに陰性.肝生検でも非特異的変化にとどまり,肝硬変などの慢性肝疾患は認めなかった.以上より特発性シャント型肝性脳症と診断したが,年齢,合併する慢性腎不全などより手術など侵襲的治療は困難と考え,蛋白制限食,分枝鎖アミノ酸製剤,二糖類などいわゆる肝性脳症の保存的治療を実施した.しかし,再三脳症を繰り返し,日常生活は極めて制限された.そこで,カテーテル操作にて経皮経肝的に脾静脈にコイルを設け,脾動脈由来の短絡は温存しつつ,上腸間膜静脈由来の短絡を遮断する樫田らのシャント分流術を施行した(図B).
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