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急激な糖尿病コントロール不良を呈し,著明な末梢組織インスリン抵抗性を伴う担癌糖尿病患者
飯塚 孝
1
1横浜労災病院内科
pp.22
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402903968
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糖尿病,特にNIDDM(インスリン非依存型糖尿病)患者では,肥満や高脂血症の合併が多く,末梢組織インスリン抵抗性をきたしやすい.さらに,経過中,食事や生活習慣の悪化によりコントロール不良となることも多い.しかし,その中で,肥満や高脂血症のない糖尿病患者で,ある時期より急激に糖尿病状態が悪化する場合があるが,そのとき,担癌状態の合併を疑うことが是非とも必要である.インスリン抵抗性は,正常血糖クランプ法でM値を測定し,正確かつ簡便に評価できる(図1).
当院では,非肥満で,高脂血症のない糖尿病患者で,急速に糖尿病コントロールが不良となり入院したが,著明なインスリン抵抗性を呈したため,悪性疾患の合併を疑い,各種検査で悪性腫瘍を証明できた30例を経験した.癌種に関して,膵臓癌のほか,糖尿病コントロール不良な6カ月後にやっと原因の判明した悪性胸腺腫例や肺癌などの呼吸器系,さらに胃・大腸癌などの消化器系,甲状腺や下垂体・副腎腫瘍など,女性例では乳癌・生殖器系,男性例では,最近,高齢者の前立腺癌などが多く,癌種によらず,著明な末梢組織インスリン抵抗性を経験している.これら症例はすべて外科的治療後,糖尿病コントロールは急速に改善し,悪性腫瘍と末梢組織インスリン抵抗性とは,各種サイトカインなどを介して,深い因果関係を有すると考えられた.
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