“ホッ”とspot
For the second case
渡辺 誠悦
1
1広南病院神経内科
pp.28
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402903971
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72歳になる女性患者のAさんが“めまい”ということで神経内科に紹介されてきた.Aさんの話を詳しく聞くと,その“めまい”の内容はフラフラとした感じがして,また最近は階段を昇ると少し息切れもするという.さっそく眼瞼結膜をみると蒼白で,末梢血のヘモグロビン濃度は4.8g/dlと高度の貧血が存在した.数日後に行った注腸造影の結果,横行結腸にapple core signが認められた.外来にきたAさんに注腸検査の結果を説明し,さらに大腸ファイバーが必要であることを話した.Aさんは渋々ながらも検査を受けることを同意した.私は大腸ファイバーの予約をする看護婦に,「ちょっと早めに検査を入れて下さい」と告げた.このとき,私はAさんに大腸の病気について不安を煽るようなことはいっさい何もいわなかった.
翌日,Aさんが自殺して亡くなったことを知らされた.Aさんが何を思って自殺をしたのか,その真相を私は知る由もないが,前日の外来で私が看護婦にいった「ちょっと早めに」という言葉を聞いて,Aさんが自分の病気を悲観して自殺したのではないかと,当時私は思い悩んだ.
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