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心原性脳塞栓症は大梗塞に至りやすく,適切な抗凝固薬の使用が必要不可欠である.『脳卒中治療ガイドライン2021』では,脳梗塞急性期にヘパリン(未分画ヘパリン,低分子ヘパリン,ヘパリノイド)の使用に関しては,推奨度C,エビデンスレベル中で,考慮してよいと示されている1).一方,直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant:DOAC)に関しては,推奨度C,エビデンスレベル低で,非弁膜症性心房細動(non-valvular atrial fibrillation:NVAF)を伴う急性期脳梗塞患者に対して,出血性梗塞のリスクを勘案して適切な時期に考慮してもよいと示されている1).
これまでのDOAC開始時期は,観察研究の結果や専門家の意見に基づいて提唱されている.例えば,欧州の治療指針では,一過性脳虚血発作では発症翌日,軽症脳梗塞では3日後以降,中等症では6〜8日後以降,重症では12〜14日後以降にDOACを開始する,いわゆる「1-3-6-12日ルール」が推奨されている2).しかし,それではDOAC開始時期が遅く,再発を招くおそれもあり,脳卒中の重症度に応じたより実際的な開始時期が,わが国で検討された.その結果,脳卒中の重症度に応じて1〜4日以内の早期にDOACを開始することが,脳卒中や全身性塞栓症の再発リスクを減少させ,大出血は増加させなかったことが観察研究で示され,「1-2-3-4日ルール」が2022年に報告された3).また,同年に別の論文でも,DOACの早期開始(5日以内)の有効性について検討され,DOACの早期開始が過度に脳出血のリスクを高めることはなく,脳梗塞再発リスクが脳出血の7倍であったことから,DOAC早期開始は妥当であるという結果が示された4).
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