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“The Treatment of Epilepsy”は,1996年の初版が出版されて以来,北米ではてんかん治療に関して最も定評のある成書の1つであり,本書はその第4版に当たる。本書は一見大部の本であるが,通覧すればすぐにわかるように,てんかん治療に関するほぼすべての疑問が本書一冊でおおよそ答えられるような形で,きわめてコンパクトにそれぞれの事項がまとめられている。てんかん診療における治療に関するさまざまな項目に関して,必要最小限で最新の知識の源泉としてこれ以上の本を望むのは難しい。ただ,本書の使用方法は基本的には教科書的な通読ではなく,辞書的な検索であることは意識しておいたほうがよい。本書の前書きは,まるでページを割くのを惜しむかのように短く書かれていて,できるだけ多くの知識をできるだけコンパクトにリストアップしようとした編者らの良心的な編集姿勢がそこにも現れているように思える。
基本的なレフェランス・ブックとして使用するのに加えて,本邦の読者にはこの秋から来年にかけて次々に市販される予定の“新”薬(すでに他の国では10年以上の使用経験があるので“ ”を付けた)についての貴重な情報源としても有用であると思われる。たとえば,トピラメイトの頁をめくると,レノックス症候群でこの薬剤がかなり効果を発揮する場合があること,また時に治療抵抗性の発作重積状態を終結させる効果を発揮する場合があることなどがわかる。また,てんかん外科の項目では,たとえば海馬硬化と“dual pathology”,さらにMRIで病巣のない場合のてんかん外科手術の適応とか,具体的に知りたい項目について,ほぼ網羅的に節が設けられているのが嬉しい。多くの著者が執筆しているため,必ずしもすべての項目で最短距離で知りたい知識にたどり着けるわけではないが,多くの項目では特定のてんかんの治療について得たい情報を比較的容易に得ることができる。
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