特集 これだけは知っておきたい検査のポイント 第7集
血液生化学検査
糖質および関連物質
乳酸,ピルビン酸
熊坂 一成
1
1日本大学医学部臨床検査医学教室
pp.246-248
発行日 2005年11月30日
Published Date 2005/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402101791
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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
ピルビン酸(焦性ブドウ酸)はグルコースの嫌気的解糖(解糖系)で生じ,糖,アミノ酸,脂肪酸代謝のすべてに関与する代謝経路の交差点に位置する重要な物質である.好気的条件下ではピルビン酸はアセチルCoAとなり,クエン酸回路(TCA cycle)で酸化されATP合成に用いられる.乳酸はピルビン酸を基質とし,嫌気的に乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase:LD)とNADHの存在下に産生される.乳酸はほとんどの器官で産生されるが,特に運動時の筋肉で大量に産生されて血中に放出される.正常な代謝回転がたもたれている場合は,乳酸の大半は肝臓に取り込まれ,ピルビン酸を経てグルコースとなる糖新生に利用される(Cori cycle:乳酸回路).
乳酸産生に影響する因子は,ピルビン酸濃度,NADH/NAD+比,および細胞内pHである.通常,血中の乳酸とピルビン酸の比率はほぼ10:1であり,組織ではピルビン酸+NADH+H+→←乳酸+NAD+の代謝応答が成り立っている.
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