今月の主題 凝固・線溶系の臨床1989
出血性疾患の病態と診断
von Willebrand病
藤村 吉博
1
1奈良県立医科大学附属病院・輸血部
pp.2342-2344
発行日 1989年11月10日
Published Date 1989/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222929
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von Willebrand因子(以下,vWFと略)は,第12番目の常染色体上の遺伝子支配により血管内皮細胞および骨髄巨核球内で産生される巨大分子糖蛋白質である.循環血液中に分泌されるとvWFは凝固第VII因子と非共有結合による複合体を形成して存在し,その安定化に不可欠の要素として働く.また血管壁の傷害が起こると,それに対応して血小板が血管内皮下組織に粘着する血栓形成の初期反応において両者の"分子糊"として働く作用を有する.このような生理機能は一般にvWF subunitが重合して生ずるheterogenousmultimer(分子量50万〜1,500万)の中でより大きな分子量を有するものほど強い1).
vWFの先天性機能欠損に基づく出血性素因がvon Willebrand病(以下,vWDと略)で,通常,常染色体性優性遺伝形式を示し,男女両性に出現し,著明な出血時間の延長と皮膚・粘膜出血などの浅在性出血症状を主徴とする.vWDには表のごとく数多くの変異病型があるが,大別すると,vWFの量的低下のみを示し,すべてのmultimer型を有するtype I,large multimerを欠きvWFの質的異常の見られるtype II,そして常染色体性劣性遺伝形式を示す稀な病型type IIIとがある.
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