増刊号 これだけは知っておきたい検査のポイント 第4集
免疫血清検査
87.TSHレセプター抗体
玉置 治夫
1
,
網野 信行
1
1大阪大学医学部・臨床検査診断学
pp.1834-1835
発行日 1989年9月10日
Published Date 1989/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222776
- 有料閲覧
- 文献概要
自己免疫性甲状腺疾患患者血中には,種々のタイプの自己抗体が存在する1).これらのうちTSHレセプター抗体(TSH receptor antibody,TRAb)は,バセドウ病における甲状腺機能亢進症および一部の甲状腺機能低下症の発症原因と考えられ,その測定は疾患の診断および経過観察には不可欠である1).
TRAbの測定法については,従来さまざまな方法が開発されてきた.初期のMcKenzieのbioassayに加えて,ヒト甲状腺スライスを用いたadenylate cyclase活性やcAMPの上昇,あるいはcolloid droplet形成などを指標としたstimulation assay法と,TSHレセプターへの標識TSHの結合阻害を指標としたradioreceptorassay法などが開発されてきた1).そして後者の測定法は,英国のスミスらによりキット化され,わが国でも次第に多く用いられつつある1,2).このキットで測定された抗体が一部ではTRAbと呼ばれているが,ラジオレセプターアッセイで測定した抗体であることを明示するため,TBII(thyrotropin-binding inhibitor immunoglobulin)と呼ぶべきであると考えられる.以下,TBIIについて述べる.
Copyright © 1989, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.