疾患と検査値の推移
バセドウ病におけるTSHレセプター抗体
日高 洋
1
1大阪大学大学院医学系研究科臨床検査診断学
pp.1378-1383
発行日 2009年11月1日
Published Date 2009/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102673
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はじめに
甲状腺ホルモンが上昇し,頻脈,体重減少,手指振戦,発汗増加などの症状を示す甲状腺中毒症には,甲状腺ホルモンが過剰に産生されて起こる場合(甲状腺機能亢進症)と,甲状腺の炎症により甲状腺内に蓄えられていた甲状腺ホルモンが一時的に血中に流れ出す場合(破壊性甲状腺中毒症)がある.甲状腺中毒症で最も頻度が高いバセドウ病(約80%)は甲状腺機能亢進症であり,次いで多い無痛性甲状腺炎(約10%)は破壊性甲状腺中毒症である.ともに甲状腺部に痛みを伴わないなど臨床症状は似ているが治療が異なるので,両疾患を鑑別することが重要である.
バセドウ病は甲状腺刺激ホルモン(thyroid-stimulating hormone,TSH)レセプター(受容体)に対する自己抗体(TSHレセプター抗体:TSH receptor antibody,TRAb)によって甲状腺が過剰刺激され,甲状腺中毒症が発生する疾患である.したがって,鑑別診断のために最初に行うべき検査は,TSHレセプター抗体である.
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