今月の主題 糖尿病マネージメントUpdate
糖尿病治療の実際
糖尿病治療の進め方と日常生活の指導のあり方
岩本 安彦
1
,
葛谷 健
1
1自治医科大学・内分泌代謝科
pp.936-940
発行日 1989年6月10日
Published Date 1989/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222499
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糖尿病患者の治療を進めるにあたっては,糖尿病がインスリンの欠乏または作用の不足に基づいて,糖代謝異常をはじめとする広範な代謝異常をきたす疾患であること,著しい代謝失調に陥れば,ケトアシドーシスや糖尿病性昏睡などの急性合併症の危険があり,長い経過中には,糖尿病に特有の,あるいは随伴しやすいさまざまな慢性合併症が起こりうることを念頭におく必要がある.私達が,日常の診療の場で接する糖尿病患者は,無症状で,糖負荷試験などにより初めて糖尿病と診断された者から,著しい高血糖,脱水,ケトアシドーシス,意識障害を伴い,直ちに適切な治療を行わなければ生命の危険がある者,あるいは,直ちに生命の危険はないものの,視力障害や腎機能低下,神経症状(末梢神経障害,自律神経障害,脳血管障害など),下肢の壊疽・潰瘍,虚血性心疾患に苦しむ者などさまざまであり,それぞれの患者の病態や症状に応じた治療計画を立てなければならない.
また,糖尿病はその成因,臨床像などにより,インスリン依存性糖尿病(IDDM),インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)およびその他のタイプなどに大別されるが,治療法とくに薬物療法の選択は病型により異なる.食事療法と運動療法は,糖尿病の病型を問わず,糖尿病の治療の基本であるが,これらを患者自身に体得させ,生涯にわたって継続的に実行させるには,医師,看護婦,栄養士などのチームによる徹底した患者教育が重要である.
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